南海トラフ地震関連解説情報
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第29回南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、第407回地震防災対策強化地域判定会で、南海トラフ周辺の地殻活動を評価しました。
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今回開催した第29回南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会、第407回地震防災対策強化地域判定会で評価した、南海トラフ周辺の地殻活動の調査結果は以下のとおりです。
現在のところ、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時(注)と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
(注)南海トラフ沿いの大規模地震(M8からM9クラス)は、「平常時」においても今後30年以内に発生する確率が70から80%であり、昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から既に70年以上が経過していることから切迫性の高い状態です。
1.地震の観測状況
【顕著な地震活動に関係する現象】
南海トラフ周辺では、特に目立った地震活動はありませんでした。
【ゆっくりすべりに関係する現象】
プレート境界付近を震源とする深部低周波地震(微動)のうち、主なものは以下のとおりです。
(1)四国西部:2月6日から10日
(2)四国中部から西部:2月10日から継続中
2.地殻変動の観測状況
【ゆっくりすべりに関係する現象】
上記(1)、(2)の深部低周波地震(微動)とほぼ同期して、周辺に設置されている複数のひずみ計でわずかな地殻変動を観測しました。また、周辺の傾斜データ及びGNSS観測でも、わずかな変化が見られています。
GNSS観測によると、2019年4月頃から紀伊半島西部・四国東部でそれまでの傾向とは異なる地殻変動を観測しています。
【長期的な地殻変動】
GNSS観測等によると、御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺では長期的な沈降傾向が継続しています。
3.地殻活動の評価
【ゆっくりすべりに関係する現象】
上記(1)、(2)の深部低周波地震(微動)と地殻変動は、想定震源域のプレート境界深部において発生した短期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。
2019年4月頃からの紀伊半島西部・四国東部の地殻変動は、紀伊水道周辺のプレート境界深部における長期的ゆっくりすべりに起因するものと推定しています。
これらの深部低周波地震(微動)、短期的ゆっくりすべり、及び長期的ゆっくりすべりは、それぞれ、従来からも繰り返し観測されてきた現象です。
【長期的な地殻変動】
御前崎、潮岬及び室戸岬のそれぞれの周辺で見られる長期的な沈降傾向はフィリピン海プレートの沈み込みに伴うもので、その傾向に大きな変化はありません。
上記観測結果を総合的に判断すると、南海トラフ地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すようなデータは得られておらず、南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません。
※この情報は従来の「南海トラフ地震に関連する情報(定例)」に用いていた電文を活用して発表しています。
[(参考) 南海トラフ地震に関連する情報の種類]
【南海トラフ地震臨時情報】
情報発表条件:
○南海トラフ沿いで異常な現象が観測され、その現象が南海トラフ沿いの大規模な地震と関連するかどうか調査を開始した場合、または調査を継続している場合
○観測された異常な現象の調査結果を発表する場合
情報名に付記するキーワード:
○「調査中」 下記のいずれかにより臨時に「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を開催する場合
・監視領域内※1でマグニチュード6.8以上の地震※2が発生
・1カ所以上のひずみ計での有意な変化と共に、他の複数の観測点でもそれに関係すると思われる変化が観測され、想定震源域内のプレート境界で通常と異なるゆっくりすべりが発生している可能性がある場合など、ひずみ計で南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる変化を観測
・その他、想定震源域内のプレート境界の固着状態の変化を示す可能性のある現象が観測される等、南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる現象を観測
○「巨大地震警戒」 想定震源域内のプレート境界において、モーメントマグニチュード8.0以上の地震が発生したと評価した場合
○「巨大地震注意」
・監視領域内※1において、モーメントマグニチュード7.0以上の地震※2が発生したと評価した場合(巨大地震警戒に該当する場合は除く)
・想定震源域内のプレート境界において、通常と異なるゆっくりすべりが発生したと評価した場合
○「調査終了」 (巨大地震警戒)、(巨大地震注意)のいずれにも当てはまらない現象と評価した場合
※1 南海トラフの想定震源域及び想定震源域の海溝軸外側50km程度までの範囲
※2 太平洋プレートの沈み込みに伴う震源が深い地震は除く
【南海トラフ地震関連解説情報】
情報発表条件:
○観測された異常な現象の調査結果を発表した後の状況の推移等を発表する場合
○「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の定例会合における調査結果を発表する場合(ただし南海トラフ地震臨時情報を発表する場合を除く)
※すでに必要な防災対応がとられている際は、調査を開始した旨や調査結果を南海トラフ地震関連解説情報で発表する場合があります。
南海トラフ もう一つの津波想定
南海トラフ巨大地震で最大クラスの地震が起きた場合、津波の高さは九州~東海の広範囲で10メートル以上、高いところで34メートルと想定されています。一方、これとは別に2020(令和2)年1月に公表されたのが「30年以内に津波に襲われる確率」。10メートル以上の津波に襲われる確率は高知県や三重県の高いところで「6%以上26%未満」となりました。一見低いようですが、実は「高い」確率だといいます。こうした想定どう受け止めたらいいのでしょうか?
目次
2つの津波想定
最大クラスの津波の高さ(中央防災会議)
「最大で高さ34メートルの津波に襲われる」東日本大震災翌年の平成24年、政府の中央防災会議が公表した数字に衝撃が走りました。南海トラフ沿いで起きる最大クラスの地震の規模をマグニチュード9.1とし、各地を襲う津波の高さは高知県黒潮町と土佐清水市で34メートル、静岡県下田市で33メートル。20メートル以上の津波も四国から関東にかけての23市町村に。そして10メートル以上の津波が静岡県、和歌山県、徳島県、高知県、宮崎県の沿岸部のほとんどの地域を襲うとされました。以前の想定では最高でも17メートル。一気に想定が2倍に跳ね上がったのです。これは、東日本大震災で想定をはるかに上回る津波が発生したことを教訓に科学的に考えられる最大クラスの地震を想定して津波の高さを試算したためでした。国や南海トラフ沿いの自治体はこの最大クラスの津波から命を守ることを目標に、防潮堤などのハード整備と住民の避難を組み合わせて対策を進めています。
津波の確率(地震調査委員会)
一方、2020(令和2)年1月に政府の地震調査委員会が公表したのが「今後30年以内に津波に襲われる確率」です。中央防災会議の想定が「最大クラスの津波の高さ」を算出したのに対し、地震調査委員会の想定は津波の高さを10メートル、5メートル、3メートルの3段階に分け、こうした津波が30年以内に来る確率を計算したものです。
その際「マグニチュード9.1の最大クラスの巨大地震は、少なくとも最近2000年間は起きておらず確率が計算できない」として対象から外されました。
対象としたのは100年から200年の間隔で繰り返し発生するマグニチュード8~9クラスの巨大地震です。
確率は「26%以上(非常に高い・図の紫色)●」、「6%以上~26%未満(高い・赤)●」、「6%未満(黄)●」の3段階で示されました。26%は100年に1回、6%は500年に1回という頻度にあたります。
津波高3m
3メートル以上の津波に「26%以上」という非常に高い確率で襲われる市町村は、四国・近畿・東海を中心に伊豆諸島や九州の71市区町村にのぼりました。
これをどう読み解けばいいのでしょうか?
気象庁は「3メートル以上の津波で住宅の流失が始まる」としていて、地震調査委は30年以内に交通事故でけがをする確率は15%としています。つまり、上記71市区町村では「交通事故に遭ってけがをする確率よりも、津波で家が壊される確率の方が高い」と考えることができます。
津波高5m
住宅の流失が急増するとされる5メートル以上の津波は、四国、近畿、東海を中心とした計29市町村で「26%以上」と非常に高くなりました。
津波高10m
10メートル以上の津波に襲われる確率は、非常に高い26%以上の市町村はありませんでしたが、高知県や三重県を中心とした計21市町で「6%以上26%未満」と高くなりました。最大クラスだけでなく可能性の高い津波に備えて
地震調査委は「次に来る津波が必ずしも最大クラスとは限らない。3メートルや5メートル、10メートルの津波はもっと高い頻度で来るということを理解してもらいたい。最大クラスの備えが全部できていればいいが、そこまでできていないところもあるので、まず可能性が高い津波を対象にできることから少しずつやっていくことも役に立つ。これまでよりも情報の種類が豊富になったと理解してほしい」としています。
より防災につなげるために
地震調査研究推進本部の施策の方針などを決める政策委員会の委員長を務める名古屋大学の福和伸夫教授は、地震調査委が公表した津波の確率について「地震や津波の起こり方は多様で、最大クラス以外の津波の可能性の方が高いので、場所によって確率も幅があると示したことには意味がある」と話しています。
一方で、「海岸での津波の高さだけでなく、自分が住んでいるところの浸水深や何分後に津波が来るのかということが大事であり、都道府県や市区町村、住民にとって必要な情報は何かを考えて提供すべきだ。地震調査研究推進本部(地震調査委員会)は防災に関わる機関とのキャッチボールを今後進めていくことが必要だ」と話しています。
新型コロナウイルスとは?
2つの顔を使い分ける狡猾なウイルス
新型コロナウイルスに感染しても、多くの場合は症状が出ないようです。症状が出る場合も大半の人では咳や発熱などの軽症で終わります。そのため、多くの人は新型コロナウイルスに感染しても気づきません。そのため、感染が急速に広がる恐れがあります。一方で、一部の患者さん、特に高齢者や糖尿病などの持病をお持ちの方には、同じウイルスが牙をむいて襲い掛かります。肺炎が急速に悪化し、多くの場合、人工呼吸が必要となります。70歳以上の感染者では致死率が10%近くなると考えられます。普段は鳴りを潜めて多くの人に感染し、抵抗力の弱い人に感染すると豹変する、非常に狡猾なウイルスです。
年齢別の患者数と致死率(中国のデータ)
60歳以上で致死率が急上昇します。MARS並みです。20歳未満の患者数は非常に少ないですが、これは無症状や軽症の感染者が表に出ていない可能性があります。
(図をクリックすると拡大します)
致死率と感染性
致死率も感染性も季節性インフルエンザや2009年の新型インフルエンザより高く、決して侮れません。(図をクリックすると拡大します)
クラスターとは?
新型コロナウイルスでは、クラスターと呼ばれる集団感染が問題となっています。クラスターの場所になりやすい条件としては、換気の悪いところ(密閉)に、多くの人が集まり(密集)、近くで会話したり、声を出すこと(密接)が考えられています。屋外のイベントであっても、大勢がトイレや休憩場所などを共有すると3つの密が重なりクラスターになる可能性があります。このような場所を作らない、行かないことが、感染の急速感染を抑えるために重要です。いくら手を消毒してマスクを着用しても、3つの密が揃うと感染が広がる可能性あります。
対策のゴール
60歳以上で致死率が急上昇します。MARS並みです。20歳未満の患者数は非常に少ないですが、これは無症状や軽症の感染者が表に出ていない可能性があります。
(図をクリックすると拡大します)
1年前の解説ですが、パンデミックのことが良く分かります。パンデミックと言えばインフルエンザだったので、新型コロナウイルスによるパンデミックを予測していた科学者は少ないと思います。
日本での新型コロナウィルスの現状を確認することができるサイトです。
一人一人の認識によって感染は減少することができます!
「植松被告」の死刑判決
今日はすみませんが、ニュースを見て感じた事を記事にしたくカテゴリを外れました。
神奈川県相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月に、入所者ら45人が刃物で刺されるなどして襲われ、うち19人が死亡した事件で、殺人罪などに問われた同園元職員の植松聖被告(30)に横浜地方裁判所は、3月16日、求刑どおり死刑を言い渡した。
植松被告は、1月8日の初公判で起訴事実を認めていたから、裁判は責任能力の有無が争点になった。弁護側は、大麻の乱用による大麻精神病で異常思考に陥り、犯行時は心神喪失の状態にあったとして、無罪を主張していた。
判決では、襲撃時に会話ができるかどうかで殺害対象を選別した点や、職員の少ない時間帯に実行するなど、一貫した目的にそって計画的に行われていたこと、事件の後に警察署に出頭していることなどから、大麻精神病の可能性を否定し、事件当時に責任能力があったことを認定している。
そのうえで「とりわけ19人もの人命が奪われたという結果がほかの事例と比較できないほど甚だしく重大である。犯情は誠に重いというほかない」として、死刑を言い渡した。
事件の背景や動機がはっきりしないのはナゼか?
この判決のあとで聞こえてくる、遺族や被害者家族の声やメディアの主張は、事件の背景や動機がはっきりしない、というものばかりだった。
「事件の本当の背景は最後までわからなかった。もやもやしたまま結審し、判決に至った」
息子が重傷を負った父親は、閉廷後に記者会見に臨み、そう語っている。
事件を起こす5カ月前に、植松被告は大島理森衆議院議長に宛てて、犯行を予告する手紙を書いている。そこにはこうある。
「障害者は不幸を作ることしかできません。」
そう思い至った理由も、犯行へと背中を押した事情も、判然としないままだ。
しかし、この裁判にその解明を求めることからして無理がある。むしろ、期待しても無駄だ。
司法制度改革に伴い、裁判員制度が導入されてから、刑事裁判は「精密司法」から「核心司法」に変わったからだ。
以前のように、職業裁判官のみで判決が言い渡された重罪に相当する刑事裁判では、被告人の生育歴からはじまって、犯行の動機や背景事情など、詳細な真相や判決理由を大量の証拠から求め、判決を導いていた。そのため、審理にも時間がかかった。
介護などの仕事で事件は今も起きている!
「彼だから事件を起こしたとは思っていない」――。2016年、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で障害者19人が殺害され26人が負傷した事件について、重度の身体障害がある木村英子参院議員(54)=れいわ新選組=はそう語る。木村氏自身も19歳までの大半を施設で過ごし、職員から虐待やいじめを受けてきたという。8日に始まる植松聖被告の裁判員裁判を前に何を思うのか。入所施設がはらむ課題と障害者差別について聞いた。
相模原事件の発生を何で知りましたか?
テレビのニュースで知りました。「ああ、起こってしまった」というのが最初の印象でした。ニュースを見て、自分が施設にいた時の光景や、虐待を受けた時の記憶が頭をよぎりました。とても怖かったし、ひとごとではないと感じました。
私は横浜市出身で、幼い頃から神奈川県内の医療やリハビリを受ける施設に入所していました。小学校は、同じ敷地内にある養護学校。養護学校高等部を卒業するとみんな当然のように成人向けの入所施設に入れられます。もし19歳の時に思い切って地域に出ていなかったら、自分は「津久井やまゆり園」にいたかもしれない。殺されていたのは私だったかもしれないという思いがあります。
施設ではどのような体験をされたのですか?
小学生の頃にいた施設では、身の回りの世話をしてくれる看護師による日常的ないじめや虐待がありました。私は食事や排せつ、着替えなどにも介助が必要です。担当の看護師の機嫌が悪そうだなと思うとトイレに連れて行ってほしいと言うのを我慢したり、機嫌の良い看護師が通りかかるのを待ったりすることもありました。
夜、消灯時間の午後8時が来ても、私だけベッドの上に上げてもらえなかったこともあります。暗闇の中、冷たい床にうずくまって寝るしかなかった。その時どうしてもトイレが我慢できず、ナースコールで呼ぶのも怖かったので、一人で廊下をはってトイレまで行こうとしましたが、結局間に合いませんでした。おもらしをした私を、看護師は「お仕置き」として狭い場所に閉じ込めました。他にも、食事の時間に遅れた時に食事をもらえなかったこともあります。食堂までの長い廊下を矯正靴を履き、松葉づえを使って必死に歩いたけれど間に合いませんでした。
良い施設もありますよ、と言う人もいます。実際にあるかもしれません。でも、少なくとも私が過ごした施設は、そうではありませんでした。職員との力関係の差のようなものを幼い頃から感じてきました。19歳で自立したのは、もうそんな場所にいたくないと思ったからです。自分でビラをまいて介助ボランティアを見つける地域生活は大変だったけれど、施設を出たことを後悔したことはありません。あそこは、泣いても叫んでも誰も気づいてくれない世界でしたから。
植松被告は津久井やまゆり園の元職員でした。障害者と関わってきた職員が事件を起こしたことは、多くの福祉関係者に衝撃を与えましたがどう思いますか?
私は、彼だから起こしたとは思っていないんです。最初は障害のある人を助けたいという思いで施設の職員になる方はたくさんいると思います。でも、施設によっては、決まった時間にご飯が来て、週2回くらいお風呂に入って、それ以外は入所者はほとんどベッドの上か狭いデイルームにいて……。そんな生活を何十年も繰り返していたら、心がだんだん死んでしまう。そんな自由を奪われた人たちの姿をずっと見続けている職員が、過重労働の中、介護を流れ作業のようにやっていく。津久井やまゆり園がそういう施設だったのかは分かりません。でも、希望が見えなくなる閉ざされた世界があるんです。本当に。
そんな環境で、植松被告のような職員が出てきてもおかしくないと思います。障害のある人を見て、何も意思がないとか、何もできないで人間として生きている価値があるんだろうかと思っている職員の方が、私は今もいると思います。だから、植松被告がおこなったことへの怒りはもちろんありますが、彼のような人が出現してしまう環境への恐怖のほうが強いですと語った。
自身の意見
私も祖父の介護をしています。私も毎日が善人ではありません。いうことを聞いてほしく優しく話しても怒鳴られたりしたら嫌な気持になり介護したくなくなることもあります。この気持ちが究極的に大きくなれば殺害する行動がでるかもしれません。この事件を私はオーム真理教事件よりも恐怖を感じます。オーム真理教事件は主導者がおりそこからの洗脳的なものによる事件でしたが、今回の事件は今後も起こりうる事件であるためです。だからこそ、この事件について介護の問題と向き合う必要があると思い記事を書きました。
【南海トラフ地震で想定される震度や津波の高さ】
政府の中央防災会議は、科学的に想定される最大クラスの南海トラフ地震(以下、「南海トラフ巨大地震」という)が発生した際の被害想定を実施しています。
この被害想定によれば、南海トラフ巨大地震がひとたび発生すると、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性があるほか、それに隣接する周辺の広い地域では震度6強から6弱の強い揺れになると想定されています。また、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波の襲来が想定されています。
南海トラフ巨大地震の津波高
(「駿河湾~愛知県東部沖」と「三重県南部沖~徳島県沖」に「大すべり域+超大すべり域」を2箇所設定した場合)「南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)」(中央防災会議, 2013)
なお、この被害想定は、発生過程に多様性がある南海トラフ地震の一つのケースとして整理されたものであり、実際にこの想定どおりの揺れや津波が発生するというものではありません。また、南海トラフ巨大地震は、千年に一度あるいはそれよりも発生頻度が低く、次に発生する南海トラフ地震を予測したものではないことにも留意が必要です。
南海トラフ地震への対策については、この地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的とした「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」に基づき、被害想定の結果を踏まえて、南海トラフ地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域が「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定され、国、地方公共団体、関係事業者等の各主体がそれぞれの立場で、建物の耐震化やハザードマップの整備等のハード・ソフト両面からの総合的な地震防災対策を推進することとされています。
南海トラフ地震防災対策推進地域
(緑色に塗られた領域、赤線で囲まれた領域は南海トラフ巨大地震の想定震源域、内閣府資料に一部加筆)
これらを分かりやすく説明されている動画のリンクを貼っておきます。
【南海トラフ地震について】
南海トラフとは
駿河湾から遠州灘、熊野灘、紀伊半島の南側の海域及び土佐湾を経て日向灘沖までのフィリピン海プレート及びユーラシアプレートが接する海底の溝状の地形を形成する区域を「南海トラフ」といいます。
日本付近のプレートの模式図
この南海トラフ沿いのプレート境界では、①海側のプレート(フィリピン海プレート)が陸側のプレート(ユーラシアプレート)の下に1年あたり数cmの速度で沈み込んでいます。②その際、プレートの境界が強く固着して、陸側のプレートが地下に引きずり込まれ、ひずみが蓄積されます。③陸側のプレートが引きずり込みに耐えられなくなり、限界に達して跳ね上がることで発生する地震が「南海トラフ地震」です。①→②→③の状態が繰り返されるため、南海トラフ地震は繰り返し発生します。
南海トラフ地震の過去事例を見てみると、その発生過程に多様性があることがわかります。宝永地震(1707年)のように駿河湾から四国沖の広い領域で同時に地震が発生したり、マグニチュード8(震度6弱)クラスの大規模地震が隣接する領域で時間差をおいて発生したりしています。さらに、隣接する領域で地震が続発した事例では、安政東海地震(1854年)の際には、その32時間後に安政南海地震(1854年)が発生し、昭和東南海地震(1944年)の際には、2年後に昭和南海地震(1946年)が発生するなど、その時間差にも幅があることが知られています。
過去に発生した南海トラフ地震の震源域の時空間分布
「南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)」(地震調査研究推進本部)
南海トラフ地震は、概ね100~150年間隔で繰り返し発生しており、前回の南海トラフ地震(昭和東南海地震(1944年)及び昭和南海地震(1946年))が発生してから70年以上が経過した現在では、次の南海トラフ地震発生の切迫性が高まってきています。
以上が南海トラフの簡単な説明になります。